太陽光発電を設置してから10年が経過し、固定価格での買い取り期間が終了する「卒FIT」を迎える方が増えています。これまでは高い単価で買い取ってもらえましたが、期間終了後は買取価格が大幅に下がってしまうため、どのように対処すべきか迷われるのは当然のことです。
何も手続きをしないままだと、お住まいの地域の電力会社が設定した安価な単価で自動的に継続されるケースが多く、非常にもったいない状態になってしまいます。そこで重要になるのが、複数の電力会社のプランを比較し、自分たちのライフスタイルに合った売電先や活用方法を見つけることです。
この記事では、卒FIT後の買取価格の相場や、電力会社を比較する際の注意点、さらには売電を続けるべきか自家消費に切り替えるべきかの判断基準について、初心者の方にも分かりやすく解説します。これから卒FITを迎える方も、すでに期間が終了して今のプランに疑問を感じている方も、ぜひ最後まで参考にしてください。
卒FIT後の買取価格を比較する前に知っておきたい基礎知識

太陽光発電の売電期間が終了する「卒FIT」は、これまでの売電収入が激減することを意味します。そのため、まずは現状がどのように変化し、なぜ比較が必要なのかという基本を理解しておくことが大切です。
卒FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度の満了)とは
「FIT制度」とは、再生可能エネルギーの普及を目的として、家庭で作った電気を一定期間(住宅用は10年間)、国が定めた高い価格で電力会社が買い取ることを義務付けた仕組みです。この10年間の期間が終了することを「卒FIT」と呼びます。
期間終了後は、これまでの40円前後の高い買取単価が適用されなくなります。自由契約となるため、売電を継続する場合は、電力会社が提示する新しい単価で契約を結び直す必要があります。何の手続きもしない場合は、地域の電力会社(旧一般電気事業者)が用意している「無契約状態を防ぐためのプラン」に自動移行されますが、これは必ずしもお得な内容とは限りません。
卒FITは、これまでの「売電で稼ぐ」ステージから、「作った電気を賢く使う、あるいは少しでも高く売る」という新しいステージへの転換点です。10年前とはエネルギー事情が大きく変わっているため、最新の情報を収集して最適な選択をすることが求められます。
買取価格が大幅に下がる理由と一般的な相場
FIT期間中の買取価格が高かったのは、太陽光パネルの設置費用を回収できるように国が優遇していたためです。しかし、卒FIT後は市場価格に基づいた買い取りになるため、価格が大きく下がります。具体的には、FIT期間中に30円〜48円程度だった単価が、卒FIT後は7円〜11円程度になるのが一般的です。
この差は非常に大きく、毎月の売電収入が4分の1から5分の1程度になってしまうことも珍しくありません。電力会社側も、買い取った電気を市場で再販売したり自社の電源として活用したりしますが、その際のコストや利益を考慮すると、どうしても10円前後の設定に落ち着くのが現状です。
地域によっても相場は多少異なりますが、東京電力や関西電力といった大手電力会社の標準プランは8円前後から9円前後が主流です。一方で、新電力と呼ばれる会社の中には、10円を超える価格を提示しているところもあります。わずか数円の差に思えますが、年間を通すと数千円から1万円以上の差が出るため、比較は欠かせません。
なぜ今「買取価格の比較」が重要なのか
卒FIT後の買取価格を比較すべき最大の理由は、電力会社によってプランの内容が多種多様になっているからです。単に「1kWhあたりいくらで買うか」という価格設定だけでなく、電気の購入契約とセットにすることで買取単価をアップさせたり、ポイント還元を組み合わせたりする会社が増えています。
また、昨今の電気代高騰も大きな要因です。売電価格が10円前後であるのに対し、私たちが電力会社から買う電気の価格は30円〜40円以上にまで上昇しています。この価格差を考えると、「安く売るよりも、高い電気を買わない(自家消費する)」方が経済的なメリットが大きくなるケースもあります。
比較を行わずに放置してしまうと、最も低い単価で売り続けることになり、せっかくの太陽光発電のポテンシャルを活かせません。ご家庭の電気の使用状況や、蓄電池の有無、将来的なEV(電気自動車)の導入検討などを含めてトータルで比較検討することが、卒FIT後の家計を守るポイントになります。
主要な電力会社と新電力の買取価格を徹底比較

卒FIT後の売電先は、大きく分けて「地域の電力会社」と「新電力」の2種類があります。それぞれに特徴があり、単純な単価以外にも注目すべきポイントがあります。
大手電力会社(旧一般電気事業者)の買取単価一覧
北海道から九州まで、各地域を支える大手電力会社も卒FIT向けのプランを用意しています。これらの会社は「安心感」が最大の魅力であり、手続きも比較的スムーズです。各社の標準的な買取価格(税込)の目安は以下の通りです。
| 電力会社 | 主な買取単価(目安) |
|---|---|
| 北海道電力 | 約8.0円 |
| 東北電力 | 約9.0円 |
| 東京電力EP | 約8.5円 |
| 中部電力ミライズ | 約7.0円〜12.0円(プランによる) |
| 関西電力 | 約8.0円 |
| 九州電力 | 約7.0円 |
大手電力会社の場合、単価は一律で低めに設定されていることが多いですが、特定のサービス(Amazonプライム特典が付帯するプランや、ガスとのセット割など)を組み合わせることで、実質的なメリットを増やしている場合があります。また、契約の切り替えを忘れてしまった場合の「受け皿」としての役割も果たしているため、基準となる価格として覚えておくと良いでしょう。
新電力(新しく参入した会社)の魅力的なプラン
新電力会社は、大手電力会社よりも高い買取価格を提示して顧客を獲得しようとする傾向があります。中には10円〜12円程度の単価を設定している会社もあり、単純な売電収入を増やしたい場合には非常に有力な選択肢となります。
例えば、地元のガス会社やケーブルテレビ局が提供する売電サービス、あるいは太陽光発電の施工業者が運営する電力会社などがあります。これらの会社は、自社の主力サービスと契約することを条件に、買取価格を数円上乗せするキャンペーンを行うことがよくあります。「今のネット回線やガスとまとめられないか」という視点で探すと、意外なお得プランが見つかるかもしれません。
ただし、新電力の場合はサービス提供エリアが限定されていたり、数年ごとに価格が見直されたりする可能性もあります。契約時には、将来的に価格が変動するリスクや、解約時の違約金の有無などをしっかり確認しておくことが重要です。高い単価に惑わされすぎず、企業の信頼性も考慮して比較しましょう。
地域限定や条件付きの高値買取プラン
特定の地域に根ざした「地域新電力」や、特定の設備を導入している人向けのプランも見逃せません。例えば、蓄電池を特定のメーカーで購入した場合に買取価格がアップするプランや、電気自動車(EV)を所有している世帯限定の優遇プランなどが存在します。
また、環境意識の高い企業が「再エネ100%」を目指すために、一般家庭の卒FIT電気を高く買い取る動きもあります。これは「非化石価値」という電気そのものの価値とは別の付加価値を評価して上乗せする仕組みです。自治体が関与している電力会社であれば、売電することで地域貢献につながるような仕組みを持っていることもあります。
これらのプランは、インターネットの比較サイトだけでは見つかりにくいこともあるため、お住まいの自治体の広報誌や、地元のエネルギー企業の公式サイトをチェックしてみる価値があります。条件に合致すれば、全国展開している大手よりもはるかに有利な条件で売電できる可能性があります。
買取価格だけで選ぶのは危険?比較時に見るべき重要ポイント

買取価格が1円でも高い会社を選びたくなるのは当然ですが、実は単価だけで選ぶとトータルで損をしてしまう可能性があります。契約後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、多角的な視点でプランを比較しましょう。
電気の購入価格とのトータルコストで考える
売電価格が高い電力会社であっても、その会社から「買う電気」の単価が高い設定になっていると、家計全体ではマイナスになることがあります。卒FIT後は、売電できる量よりも電力会社から買う量の方が多い家庭がほとんどです。そのため、「売電単価が高いこと」よりも「買電単価が安いこと」の方が経済的メリットが大きくなる場合が多いのです。
例えば、売電価格が他社より2円高くても、買う電気の基本料金や従量料金がそれ以上に高ければ、毎月の請求額は増えてしまいます。最近では、燃料費調整額や再生可能エネルギー発電促進賦課金などの影響で電気代の計算が複雑になっています。比較する際は、年間の「売電収入」と「電気代の支払い」の両方をシミュレーションすることが不可欠です。
理想的なのは、自分の家の電気の使用パターン(昼間に電気を多く使うのか、夜間に使うのか)に合った購入プランを持ち、かつ納得できる価格で買い取ってくれる会社を選ぶことです。シミュレーションツールを提供している電力会社のサイトを活用し、具体的な金額で比較することをおすすめします。
セット割やポイント還元の有無を確認する
現代の電力契約は、他のサービスとの組み合わせで真価を発揮します。ガス、インターネット、スマートフォン、ガソリン代など、生活に密着したサービスと連携することで、実質的な買取価格以上のメリットを得られるケースが増えています。
例えば、以下のような特典が考えられます。
・ガスとセットで契約すると、毎月の電気代が数百円割引される
・売電量に応じて、スーパーやドラッグストアで使える共通ポイントが付与される
・特定のガソリンスタンドでの給油がリッターあたり数円安くなる
ポイント還元の場合、1kWhあたりの単価に換算すると1円〜2円分に相当することもあります。自分が普段からよく利用しているサービスがあるなら、その関連企業が売電サービスを提供していないか確認してみましょう。現金での受け取りにこだわらず、トータルでの生活費削減という視点を持つことが大切です。
「仮想蓄電池」や預かりサービスの仕組み
最近注目されているのが「仮想蓄電池(バーチャル蓄電池)」や「お預かりサービス」と呼ばれるプランです。これは、昼間に余った電気を物理的な蓄電池に貯めるのではなく、電力会社が帳簿上で「預かった」ことにしてくれるサービスです。
具体的には、昼間に売電した分を、夜間の電気使用量から相殺(充当)してくれる仕組みです。多くのプランでは、売電単価(例:8円)よりも買電単価(例:30円)の方が高いため、売電した分をそのまま自分の夜間の電気として使えるこのサービスは、実質的に30円近い価値で電気を活用できることになります。
このサービスを利用するには月額利用料が必要な場合が多いですが、高価な物理的蓄電池を導入せずに、効率よく自家消費に近いメリットを得られるのが魅力です。比較の際には、単に電気を「売る」だけでなく、このように「活用する」プランの有無もチェック項目に入れておくと選択肢が広がります。
一部の新電力会社では、解約時に数千円程度の事務手数料が発生したり、契約期間の縛り(いわゆる「2年縛り」など)があったりすることがあります。買取価格の高さに惹かれて契約する前に、契約条件の細部まで目を通しておくことが重要です。
売電か自家消費か?卒FIT後の進路を比較検討する

卒FITを迎えた際、最も大きな分岐点となるのが「これまで通り売電を続けるか」それとも「作った電気を家で使い切る(自家消費)にシフトするか」という判断です。現在の電気代高騰を考えると、自家消費のメリットが以前よりも格段に高まっています。
「売電継続」のメリットと向いている家庭
売電を継続する最大のメリットは、新たな設備投資が必要なく、これまでと同じ運用を続けられる手軽さにあります。卒FITの手続きとして、新しい電力会社と契約を結ぶだけで済むため、手間を最小限に抑えたい方に適しています。特に、設置から10年が経過し、これ以上の追加投資を避けたいと考えている場合には最適な選択です。
売電継続に向いている家庭の特徴は、昼間の在宅時間が短く、電気の使用量がそもそも少ない世帯です。また、太陽光パネルの設置容量が小さく、蓄電池を導入しても投資回収が難しいと判断される場合も、売電を続けた方が賢明です。たとえ1kWhあたり10円前後の安い単価であっても、捨てるよりは家計の足しになります。
ただし、将来的にさらに売電価格が下がる可能性や、電気代がさらに上がるリスクを考えると、一時的な選択肢として捉えておき、数年ごとに状況を見直す姿勢が重要です。まずは手間をかけずに現在の電力会社を比較し、少しでも条件の良いところに切り替えることから始めましょう。
「蓄電池導入」で自家消費を最大化する
卒FIT後の定番の選択肢となっているのが、家庭用蓄電池の導入です。蓄電池があれば、昼間に発電した余剰電力を貯めておき、太陽が出ていない夜間や早朝に使用することができます。これにより、電力会社から高い電気を買う量を大幅に減らすことが可能になります。
蓄電池導入の主なメリットは以下の通りです。
・高い買電単価(30〜40円)の削減による大きな節約効果
・停電時でも電気が使えるという圧倒的な安心感
・電気の自給自足率を高め、再エネを有効活用できる満足感
蓄電池は依然として高価な買い物ですが、国や自治体からの補助金を活用することで初期費用を抑えることができます。10年、15年という長いスパンで家計を考えたとき、安い単価で売電し続けるよりも、蓄電池を導入して高い電気を買わない仕組みを作る方が、最終的な経済メリットが上回るケースも増えています。
電気自動車(EV)やV2Hの活用という選択肢
蓄電池の代わりとして、あるいは蓄電池以上の容量を持つエネルギー源として期待されているのが「電気自動車(EV)」です。電気自動車を「走る蓄電池」として活用し、太陽光で発電した電気を車に貯め、それを夜間に家で使う「V2H(Vehicle to Home)」というシステムが普及し始めています。
一般的な家庭用蓄電池の容量が5〜10kWh程度であるのに対し、EVは40〜60kWh以上の大容量バッテリーを搭載しています。これを活用すれば、数日分の家庭の電力をまかなうことも可能です。卒FITを機に車の買い替えを検討しているなら、ガソリン代の節約と家庭の電気代削減を同時に実現できる、非常に魅力的な選択肢となります。
V2Hシステム自体には設置費用がかかりますが、これも補助金の対象になることが多く、EVの購入補助金と合わせると導入のハードルは下がります。これからの暮らしを「エネルギーの自給自足」という視点でアップグレードしたい方にとって、EVと太陽光の組み合わせは最強の比較ポイントになるでしょう。
卒FIT後の手続きをスムーズに進めるための3ステップ

比較検討して進むべき道が決まったら、次は実際の手続きです。卒FITの手続きは早めに動くことが成功の鍵となります。余裕を持って準備を進めましょう。
ステップ1:FIT満了時期の確認と通知のチェック
まずは、自分の家がいつ卒FITを迎えるのかを正確に把握しましょう。通常、満了の半年から数ヶ月前になると、現在売電している電力会社から「買取期間満了のお知らせ」というハガキや書類が届きます。これには満了日や、その後の標準的な案内が記載されています。
もし通知が見当たらない場合は、設置した際の中間報告書や検針票(売電票)を確認するか、電力会社のカスタマーセンターに問い合わせてみましょう。期限ギリギリになってから慌てて比較を始めると、じっくり選ぶ時間がなくなってしまいます。「満了日の3ヶ月前」には情報の収集を始めておくのが理想的なスケジュールです。
この段階で、直近1年間の「売電量(kWh)」と「買電量(kWh)」を整理しておくと、各社のシミュレーションを行う際に非常に役立ちます。毎月の検針票をまとめて保管しておくか、Web明細を確認できるようにしておきましょう。
ステップ2:プランの比較と申し込み手続き
候補となる電力会社を数社に絞り込んだら、本格的に比較を行います。各社のWebサイトにあるシミュレーション機能に自分の売電・買電データを入力し、どれくらいお得になるかを算出します。この際、不明な点があれば電話や問い合わせフォームで積極的に質問しましょう。サポート体制の良さも会社選びの大事な要素です。
新しい売電先が決まったら、Webサイトから申し込みを行います。手続きには「お客様番号」や「地点特定番号(供給地点特定番号)」などが必要になります。これらは検針票や電力会社からの通知に記載されている22桁の番号です。
多くの場合、新しい売電先が現在の電力会社への解約手続きを代行してくれるため、自分から今の会社に電話をして解約を伝える必要はありません。ただし、会社によっては個別の手続きが必要なケースもあるため、申し込み時の注意事項をよく読んでおきましょう。契約の切り替えには1ヶ月程度かかることもあるため、早めの申し込みが安心です。
ステップ3:切り替え後の確認と定期的な見直し
無事に新しいプランへの切り替えが完了したら、最初の数ヶ月は「想定通りの売電収入や電気代になっているか」を必ずチェックしてください。シミュレーションと大きな乖離がないかを確認し、もし思っていたほどお得でないと感じた場合は、再度プランの変更や他社への乗り換えを検討しても良いでしょう。
卒FIT後の契約は、かつてのFIT制度のように10年間固定されるものではありません。市場環境の変化に合わせて電力会社が単価を見直すこともありますし、より魅力的な新サービスが登場することもあります。「一度決めたら終わり」ではなく、年に一度は最新の情報をチェックする習慣をつけることが、長期的な節約につながります。
また、太陽光パネルやパワーコンディショナ(電気を変換する装置)も設置から10年が経てばメンテナンスが必要です。売電先を変えるタイミングで、専門業者に点検を依頼するのも賢い選択です。設備が正常に動いていなければ、どれほど良いプランを選んでも十分な効果は得られません。設備の健康状態にも気を配りましょう。
卒FIT後の買取価格比較で最適な選択をするためのポイントまとめ
卒FITは、これまでの10年間とは異なる新しい電力活用のスタートラインです。ただ漫然と売電を続けるのではなく、情報を集めて比較することで、大きなメリットを手に入れることができます。最後に、後悔しないためのポイントを振り返りましょう。
まず、「買取単価の高さだけで選ばない」ことが鉄則です。売電価格が1円高いことよりも、電気の購入料金やセット割、ポイント還元、さらには独自の預かりサービスなどの付加価値を合わせた「トータルメリット」で判断してください。自分のライフスタイルに最も合う形が、家計にとっての正解です。
次に、「自家消費へのシフトを検討する」ことです。電気代の高騰により、作った電気を売るよりも自分で使う価値の方がはるかに高くなっています。蓄電池やEVの導入、あるいは「仮想蓄電池」プランの活用など、自分の家に合った「賢く使う仕組み」を比較の選択肢に加えましょう。
最後に、「早めの準備と定期的な見直し」を忘れないでください。満了の3ヶ月前には比較を始め、切り替え後も市場の動向を見守る姿勢が大切です。太陽光発電という素晴らしい資産を最大限に活かせるよう、この記事を参考に、納得のいく選択をしてください。一歩踏み出して比較を始めることが、これからの豊かな暮らしと節約への近道です。



